300字ss「夜」 2015.10.03
○まよなか男爵○
まよなか男爵
まよなか男爵
不思議な口笛ふきながら
まよなか男爵 やってくる
大海原を乗りこえて とんがり山を飛びこえて
お月様を背中にしょって まよなか男爵やってくる
ながい足で歩くのは ながい腕を伸ばすのは
夜がこわい子のために 世界がこわい子のために
こころのそこから願うなら
まぶたのうちから願うなら
だれもいない不思議な場所へ
だぁれもこない遠い場所へ
まよなか男爵
まよなか男爵
どこかでだれかが望むなら
大海原を飛びこえて おおきな塔を踏みこえて
まよなか男爵 やってくる
きみの町まで やってくる
○マヨナカダンシャク○
誰もしらないとこへつれてってくれるんだって。
そういって秘密を教えてくれたまゆちゃんは、一昨日から学校にこなくなった。
ごぜん2時。
あけた窓のまえで目を閉じると、まっくらやみのなかで遠い電車の音がきこえた。
(まゆちゃんのとこに連れていってください)
どれぐらいお願いしていたかわからないけれど、なにかがぐるんと腰にまきついて体が浮かぶのがわかった。そのまま顔や体にあたる風がどんどんつよくなる。
“なにがあっても目をあけちゃだめ“
でも…少しだけなら?
うつむきながらうすく目をあけると、腰をしばってビクビクふるえる触手が見えた。
「!」
思わず顔をあげた真正面、まんまるの月に照らされて、
きばのならぶ
おお きな
く ち が