300字ss「色」 2017.05.06
○四十八茶百鼠○
海老茶 紫紺 水浅葱 鴇 鶸 翡翠 京紫
吹奏楽部の練習を遠くに聞きながら、窓際の席でノートに文字を連ねてゆく。向かいには「むつかしい漢字ばっか」と眉間にしわを寄せる友人。
(日本の色名は種類が多いなんて言うんじゃなかったな)
そんなことを思いながらペンを走らせていると「なあアレは?」と声がかかる。指さす先には校庭の隅に設けられた花壇。
金茶 紅赤 藤納戸
見たままに色名を綴ると、「おれ一番イイ言葉知ってる」と彼が筆箱からペンをとりノートへ一文字。
Colorfull
「な?」
「…エルがひとつ多いぞ」
「マジ!?」
うろたえる彼をよそに花壇に目をやる。たしかに花は色とりどりで、こいつの意外性にも一目置くが…素直に褒めるほど人間はできちゃいない。