モジモノノ

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#twnovelまとめ 遺失物預り所

【2014年12月1日のつぶやき】 

12月です師走です。忘年会です宴会です。酔っても酔っていなくても、どこかそわそわ落ち着かず、足早に過ぎる一カ月。これから忘れ物も多くなるんだろうなと想像したらふいに繋がった、どこぞの遺失物預り所。思いつきそのままに、連投いきます9連発。

 

「大切なお人形なんです」囁く少女の髪に赤いリボン。リストを見るも該当ナシ。伝えるこちらへ頭を下げ、少女はとぼとぼ廊下の奥へ。赤いリボンが緋々と揺れ、ぱっと爆ぜて燃え消えた。 #twnovel この建物が建つ前に酷い火事があったと思い出す。ここは遺失物預り所。時々妙なことが起きる。

 

一度は離れた持ち主の元へ、戻れることは幸いだ。思い入れや必要に迫られてこそ人は失せ物を探す。 #twnovel 「きっと来るさ」。ひっそり棚に鎮座するそれへ呟いて受付へ。どこかしっとりと冷たい箱は、あす警察に引き渡すことになるだろう。終業まであと3時間。取りに来てくれと切に願う。

 

「ごめんなさいねえ」そう言って笑う老婦人。買い物袋に老眼鏡。今やすっかり遺失物預り所の常連だ。ちなみに本日は鰐皮の鞄をお忘れ。 #twnovel 「あら困った、どうしましょ」。見れば受取書の住所欄が空白。顔を見合わせ二人で苦笑い。そういえば昨日は郵便番号をお忘れだったと思い出す。

 

一人目はブランドマフラー、二人目は買ったばかりのコート、三人目は金の指輪で四人目は携帯ゲーム機。たて続けに引き渡したあと、ふと目に入ったのは受付に転がる洒落たボールペン。 #twnovel これは一体何人目のものか。新たな忘れ物になる前に、できれば気づいて取りに戻ってきてほしい。

 

「コレのこと内緒でお願いします」そう囁いて青年はきびすを返す。彼の左手には渡したばかりの紙袋。颯爽と廊下をゆく姿は、やり手のビジネスマンといった風情。 #twnovel 深紅のドレスに揃いのヒール。女性用にしてはサイズが一回り大きいと思っていたが。いやはや、人は見かけによらない。

 

蛍光灯が瞬いて消えた。闇。明るくなった手元にはボールペンと日報。本日の遺失物引き取り5件、預かり8件。自分の字なのに違和感。一体なにが… #twnovel ジジッ。蛍光灯が瞬いた。手元にはボールペンと日報。引き取り0件。そうだ今日は誰も来なかった。ならさっきのは予知夢? まさか。

 

「信じらんない!」怒る彼女を連れがなだめる。無残に裂かれた羊のキーホルダー。発見時はすでにこの状態だったと聞く。 #twnovel 書類に記入後、羊を受け取った彼女は涙目で。申し訳なさを感じながら二人を見送り、ふと気づく。彼女の背をなでる連れはいやに嬉しそう。重い吐息がこぼれた。

 

仕事はいつも倉庫の点検から。ずらりと並んだ棚にはいくつもの忘れ物。即日引き取りに来るものもあれば、長いあいだ居座るものもある。忘れ物に口があったなら怨嗟の声を上げるだろうか、それとも嘆きかため息か。 #twnovel 白々しい蛍光灯を消して扉を閉める。さあ時間だ、窓口を開けよう。

 

「忘れたのは一月前だそうです」申し訳なさそうな店員の問い合せ。倉庫の入り口で首をひねる。さてどこだった? 「左端2段目」天井からの声に頷いて指定の棚へ。 #twnovel 享年58歳、勤務中の心不全。声だけが残るのは未練か矜持か。ここは遺失物預り所。倉庫には見えない前任者がいる。

  

【12月29日のつぶやき】

「だあらぁ眼鏡をートイレに忘れたんだよぉ」赤ら顔のサラリーマンの説明は6回目。こちらが言葉をはさむ間もなく窓口でくだを巻くこと15分。「ほんっと困んだよねぇ俺ぇ」その泣き言はさっきも聞いた。 #twnovel さて、どのタイミングで伝えたものか。彼の頭に鎮座する眼鏡のことを。