モジモノノ

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#twnovelまとめ 少女と冬将軍

【2014年12月11日のつぶやき】

星も凍える冬の夜。おとずれた公園には空を見上げる童がひとり。赤い襟巻きに濃紺の外套。いつからここに居るのか、肌はほの青く吐息も細い。「わっぱよ、こんなところで何をしている」。幼いその背に声をかけたのは、ただの気まぐれ。 #twnovel 振り向いた童の目に、白い己の姿が映った。

 

「おじさん、さんたさん?」
「違う」
「だっておひげあるよ?」
「髭ぐらい誰でもあるだろうに」
「カナコのぱぱ、おひげないもん」
「…」
「おめめ、あおいね」
「いいかわっぱ、儂は…」
「さんたさんのあかいおよーふく、きょうはおせんたく?」
「…」
#twnovel 冬将軍、サンタと間違えられる。

 

「わっぱ、今宵は冷える。家があるなら帰るがよい」
「カナコ、さんたさんにおねがいがあるの」
「…仕方ない、では儂がその『さんたさん』とやらだ。願い事があるなら言うがよい」
「…」
「む? どうした」
「さっきちがうってゆってた」
「どうしろと言うのだ」
#twnovel 冬将軍、大いに困る。

 

「あのねあのね。ゆきがふったらほわいとくりすますだってせんせーゆってたの。カナコそれみてみたい」
「それがぬしの願い事か」
「うん」
「まあ…叶えられんこともない、雪風とは知己だ」
「ほんと?」
「儂を誰だと思っておる」
「さんたさん!」
「…」
#twnovel 冬将軍、ついに訂正を諦める。

 

「カナコとやら、ぬしの願いは叶えてやる。だから今日は家に帰るのだ。よいな」
「さんたさんは?」
「儂はここに残る」
「こうえんさむいよ?」
「無用の心配だ」
「じゃあこれかしてあげる」
「おい…わっぱ」
「さんたさんばいばーい」
「…寒くないと言うに」
#twnovel 冬将軍と赤い襟巻きと。

 

冬晴れの予報を裏切って厳しく冷え込み、夕方から降りはじめた雪は夜半にかけて大雪となった。交通機関の沈黙で幕を開けた12月25日。彼女が見たのは、輝くようなホワイトクリスマス。 #twnovel あの夜出逢った「さんたさん」にお礼をすべく、彼女が夜の公園に通うのはまた別のはなし。