#twnovelまとめ 付喪神

【2015年1月24日のつぶやき】

ぽってりまるい青磁の香炉は婆さんの愛用品。時おり箱から出しては眺めたり手にしたり。「まあ、おいらとしちゃそろそろ使って貰いてぇんですがね」「!?」思わず取り落としそうになって慌てて持ち直す「せっかく付喪になったんだ、壊さねえでくだせぇよ、兄さん」手の中で古びた香炉が呵々と笑った。

「灰はならしてくだせぇね」「そんなでっかい炭、おいらヤですよ」「兄さんほんっと不器用ですねえ」今日も今日とて香炉はうるさい。四苦八苦しながら炭の上に木片を置けば、ふわりと香りが立ちあがる。「…あの人ぁこれが一等好きでしてねぇ」そうして香炉は語りだす。今は亡き彼女との日常を。

【2015年1月28日のつぶやき】

古物市で見つけた電気スタンドは電球だけのシンプルなもの。日本語の通じる“ガイジン”が珍しかったのか「まあ百年は経つんじゃないかね？」なんて坊主頭の店主は嘯いてた。年代の真偽はさておき、友人に聞いたあの噂を試す価値はあるだろう。「ツクモガミ、ね」帰り道、右手に提げた重さが心地よい。

「果報は寝て待てとはよく言ったもんだ」ワイングラスを傾け新しい主が笑う。「あの店主は10年ほど読み違えたようだけど」に、と引いた口もとには鋭い犬歯。「ここはいい国だ」「そうですか？」「ああ、思わぬ話相手ができたからね」彼は目を細め、ちょいとグラスを掲げてみせた。「君の灯りに乾杯」